
【浄土和讃のやさしい解説】第3回「弥陀成仏の」
親鸞さまの「弥陀成仏の」の和讃をわかりやすく解説。長遠の時間を超えて届く仏の光と、私たちの迷いや闇を照らす意味を紐解きます。
「阿弥陀さまのお名前はよく聞くけれど、そのお心や願いの本当の意味はよくわからない…」
そんなふうに感じたことはありませんか?
浄土真宗のお経(聖典)の中には、親鸞聖人が詠まれた和讃(わさん)が数多く残されています。
なかでも今回取り上げる和讃は、とても有名で、多くの方がお耳にしたことがあるでしょう。
でも、いざ意味を聞かれると「うーん…なんとなくしかわからない」と思われる方も多いはずです。
そこで本記事では、この和讃を丁寧に読み解きながら、阿弥陀さまのお心に込められた大きな慈悲の世界を一緒に味わっていきたいと思います。
それでは、始めていきましょう🎵
*この記事は、以下のポッドキャストの文字起こしを元に作成しています。
目次
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和讃の原文📜
まずは、今回の和讃を全文引用しておきますね。
陀成仏のこのかたは
いまに十劫をへたまへり
法身の光輪きはもなく
世の盲冥をてらすなり
一見すると難しい漢字が並んでいますが、一つひとつ意味をたどっていくと、阿弥陀さまの願いがとても鮮やかに浮かび上がってきます。
阿弥陀さまの誕生とは?✨
最初に出てくる「弥陀成仏」とは、阿弥陀如来さまが仏となられたことを指しています。
もともと阿弥陀さまは法蔵菩薩(ほうぞうぼさつ)という菩薩さまでした。
その方が深い誓願を立て、修行を重ねられて仏となった。
それが、私たちがよく知る阿弥陀如来さまなのです。
つまり「成仏」とは、法蔵菩薩が阿弥陀仏となられた、ということになります。
「この方は」の本当の意味⏳
次に続く「この方(このかた)は」という表現。
これを「このお方は…」と人を指すように解釈されることが多いのですが、実は少し違います。
ここでの「この方」とは、時間を示す言葉です。
「このとき以来」という意味で使われているのですね。
つまり、「阿弥陀さまが仏となられてから、それ以来ずっと…」というニュアンスになります。
ここから和讃は、阿弥陀さまの願いが、はるか昔から未来永劫に至るまで変わらないことを説いていきます。
「十劫(じっこう)」とはどれほど長い時間か?⏳🪨
続いて「今に十劫をへたまり」とあります。
ここでの「十劫(じっこう)」とは、仏教における時間の単位です。
実は、一劫(こう)=43億2千万年という途方もない長さを表しています。
想像しにくいので、こんなたとえがあります。
- 一辺160キロもの巨大な岩がある。
- そこへ100年に一度、天女が羽衣でふわりと岩を撫でる。
- その摩擦で岩がすり減り、ついには完全に消えてしまったとしても、まだ一劫は終わらない。
信じられないくらいの時間の長さですよね。
その一劫が十倍積み重なったのが「十劫」です。
つまり、「阿弥陀さまが仏となられてから、実行ものすごく長い年月が経った」という意味になります。
「発身の光輪」とは何を示すのか💡
次に「法身の光輪きもなく」とあります。
「法身(ほっしん)」とは、仏さまの存在そのもの、つまり真理そのもの。
私たちは煩悩にとらわれ、真実をそのまま見ることができません。
仏教ではこれを「無明(むみょう)」、つまり知恵の光が届かない暗闇と表現します。
しかし阿弥陀さまは、その光輪を限りなく放ち続け、私たちを照らし出してくださる。
たとえどれほど深い闇に覆われていても、その光は必ず届いているのです。
「世の盲冥を照らす」とは🌌
さいごの「世の盲冥(もうみょう)を照らすなり」という一句。
「盲冥」とは、目を開けても何も見えないような暗闇を表します。
これは単なる物理的な闇ではなく、私たちの心の状態を指しているのですね。
- 偏見や思い込み
- プライドや欲望
- 他人への誤解
こうした心のフィルターが、真実を見通すことを妨げている。
それが「盲冥」です。
阿弥陀さまの光は、そんな私たちの闇を切り裂くように照らし出し、正しい方向へと導いてくださるのです。
まとめ✅
今回取り上げた和讃を整理すると、次のようになります。
- 阿弥陀さまは法蔵菩薩として誓願を立て、仏となられた
- そのとき以来、十劫という長遠の時間が過ぎても誓いは変わらない
- 阿弥陀さまの本質から放たれる光は、限りなく広がり続けている
- 私たちが迷いや煩悩に覆われても、その光は必ず届いている
阿弥陀さまの光に照らされて初めて、私たちは自分の「見えなかった闇」に気づくことができます。
そして、その気づきに「おかげさま」と感謝することが、仏教の実践につながっていくのですね。
大切なのは、照らされていることに気づき、そこに感謝を寄せることです。
どうぞ、この和讃の意味を、あなたの生活の中でも味わってみてください。
さいごまでお読みいただき、本当にありがとうございました。