
【浄土和讃のやさしい解説】第5回「解脱の光輪」
仏さまの知恵の光は、限りなく広がり、私たちの偏った見方をやわらげてくれます。「有無を放る」とは何を意味するのか、思い込みからの解放をテーマにやさしく解説します。
「どちらかに偏った判断しかできない…」
そんなふうに、自分の考えに縛られて苦しくなることはありませんか?
浄土真宗でよく読まれる『和讃(わさん)』には、そのような悩みをそっと解きほぐしてくれる教えが記されています。
今回ご紹介するのは、その中の一首。
一言でいえば 「あなたは、もうすでに救われている」 というメッセージなんです。
少し大げさに聞こえるかもしれませんが、この和讃を味わっていくと、思い込みにとらわれた心が少しずつゆるんでいくのを感じられると思います。
それでは、はじめていきましょう🎵
*この記事は、以下のポッドキャストの文字起こしを元に作成しています。
目次
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和讃の原文📜
今回取り上げる和讃は、次のようなものです。
解脱の光輪 きわもなし
光触かふるものはみな
有無をはなるとのへたまふ
平等覚に帰命せよ
少し難しい言葉が出てきましたね。
一行ずつ、紐解いてみましょう。
「解脱の光輪」💡
最初に出てくる「解脱(げだつ)」とは、煩悩や執着から離れること。
つまり「悟り」という意味を含んでいます。
「光輪(こうりん)」は仏さまの智慧を象徴する言葉。
仏像の背後から差し込む後光のようなものをイメージするとわかりやすいですね。
この光は、私たちを迷いから救い、悟りへと導いてくれるはたらきを持ちます。
そして「きわ(際)もなし」と続くので、つまり 「その光は限りなく、遮るものがない」 という意味になるのです。
「光触かぶる」☀️
次に出てくる「光触(こうそく)」とは「光に触れること」。
「かぶる」とは「受ける」という意味です。
つまり「仏さまの知恵の光に触れ、それを受け取ること」を表しています。
その光を受けたとき、どうなるのでしょうか?
和讃は「有無をはなる」と続きます。
「有無をはなる」⚖️
「有無」とは「あるか、ないか」。
つまり、物事を白黒ではっきり分けてしまう見方のことです。
私たちはつい「正しいか間違いか」「成功か失敗か」と二分法で考えてしまいがちですよね。
ですが、その見方はときに偏見や思い込みにつながり、自分を追い込んでしまうこともあります。
仏さまの光に触れることで、私たちは 「その偏った見方を手放すことができる」 のです。
「平等覚に帰命せよ」🙏
さいごに出てくるのが「平等覚(びょうどうかく)」。
これは「すべての人を平等に救う仏さま」という意味です。
そして「帰命せよ」とは「疑うことなく、おまかせしなさい」という呼びかけですね。
まとめると、
仏さまの光は限りなく広がり、その光を受けることで偏見から解放され、すべての人に平等の悟りを与えてくださる。
だから安心しておまかせしなさい。
ということになります。
思い込みの恐ろしさ😨
ここで一つ、面白い実験をご紹介しましょう。
ある心理実験で、参加者の顔に「目立つ傷の特殊メイク」を施してから会話をしてもらうことに。
会話を終えてから、メイクを施された人に話をうかがうと、
「相手は私の傷ばかり見ながら、話をしていた」
と、お答えになりました。
ところが、、、
実際に会話が始まる直前、
「あ、ちょっとだけ手直ししますね〜」
と、メイクに手を加える"フリ”をしたのですが、、、
実はそのメイクは消されていたんですよ。
つまり、本人は「自分の顔に傷がある」と思い込んだまま相手と話していたのです。
実際には、相手は普通の顔を見て会話していたのです。
この話からわかるのは、「思い込みは現実以上に自分を縛ってしまう」 ということ。
実際には存在しない傷を気にして、不安を大きくしてしまうのです。
和讃が教えてくれること✨
こうした「思い込み」は、私たちの日常にもあふれています。
- 「これは成功か失敗か」
- 「自分は正しいのか間違っているのか」
- 「こうあるべきだ」「こうでなければならない」
このような二分法の考え方は、ときに自分を苦しめてしまいます。
だからこそ、仏さまの光は「有無をはなる」ことを勧めているのだと思います。
その光は、私たちの狭いものの見方をやわらげ、心を自由にしてくれるのです。
まとめ✅
今回の和讃から学べるポイントを整理しておきましょう。
- 解脱の光輪きわもなし → 仏さまの智慧の光は限りなく広がる
- 光触かぶる → その光に触れることで導かれる
- 有無をはなる → 白黒の偏った見方から解放される
- 平等覚に帰命せよ → 仏さまはすべての人を平等に救う
つまりこの和讃は、
「あなたはすでに救われている。
仏さまの光に包まれ、偏見や思い込みから自由になりましょう」
というメッセージなのです。
大切なのは、偏見や思い込みにとらわれすぎず、安心して仏さまにおまかせすること。
ぜひ、あなたの心の一部にこの和讃を取り入れてみてくださいね。
さいごまでお読みいただき、本当にありがとうございました。