和讃、浄土和讃、高僧和讃、正像末和讃

浄土真宗において重要な書物、とくに和讃について解説

親鸞聖人が残した「和讃」は、実はメロディーで教えを学べる「歌」なんです🎵浄土真宗の重要な書物と共に、その親しみやすい魅力をわかりやすく解説します。

公開日: 2025/9/21

なんだかいつも、心がざわざわして落ち着かない…。

仏教の教えに、なにか生きるヒントがあるのかもしれない。

そんなふうに感じて、本屋さんで仏教書を手に取ってみたけれど、漢字ばかりで難しくて、そっと棚に戻してしまった…。

そんな経験、ありませんか?

その気持ち、とってもよくわかります。

仏教の言葉は難しくて、なかなかスッと頭に入ってこないですよね。

でも、もし、仏教の教えが「歌」になっていて、メロディーに乗せて口ずさむように学べるものがあったとしたら、少しだけ親しみやすく感じませんか?

今日は、浄土真宗を開かれた親鸞聖人(しんらんしょうにん)が、わたしたちのために残してくださった和讃(わさん)という素晴らしい「歌」について、お話ししていきたいと思います。

「仏教って、やっぱり難しそう…」

そう感じているかたも、ご安心ください。

この記事を読み終えるころには、なぜ親鸞聖人が難しい教えを「歌」にしたのか、その温かいお心が、きっとじんわりと伝わってくるはずです。

それでは、はじめていきましょう🎵

*この記事は以下のポッドキャストの文字起こしを元に作成しています。

目次

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浄土真宗、まず知っておきたい大切な3つの書物

浄土真宗には、宗派の教えの根幹となる、とても大切な書物がいくつもあります。

その中でも、今回は厳選して3つ、ご紹介してみたいと思います。

「いきなり専門書の話?難しそう…」と感じるかもしれませんが、大丈夫ですよ。

それぞれの本が、どんな役割を持っているのか、ざっくりとイメージを掴むような気持ちで、リラックスして聞いてみてくださいね。

①『教行信証(きょうぎょうしんしょう)』

これは、親鸞聖人が生涯をかけて書き上げられた、いわば「浄土真宗の博士論文」のような、もっとも重要な書物です。

親鸞聖人が90歳で亡くなる直前まで、何度も書き直しをされたといいますから、その想いの深さが伝わってきますよね。

内容は、仏教全体の広い視点から、「お念仏(ねんぶつ)の教えこそが、迷い苦しむわたしたちにとって、唯一開かれた道なのです」ということを、論理的かつ徹底的に明らかにされたものです。

ただ、非常に難解な内容なので、専門家でも読み解くのが大変だといわれています。

ぼくも、まだちゃんと読んだことはないんですよ。

いつか挑戦してみたい一冊です。

②『歎異抄(たんにしょう)』

こちらは、もしかしたら名前を聞いたことがあるかたも多いかもしれませんね。

「東洋の聖書」とも呼ばれ、世界中で読まれている有名な書物です。

これは親鸞聖人が書かれたものではなく、お弟子さんである唯円(ゆいえん)という方が、親鸞聖人から直接聞いたお言葉を書き残したものだといわれています。

親鸞聖人が亡くなったあと、その教えが少しずつ歪んで伝わっていくことを嘆いた唯円さんが、

「親鸞聖人は、本当はこんなことをおっしゃっていたんだ!」

と、その真実の言葉を後世に伝えようとされたんですね。

いわば、「親鸞聖人の生の声が聴こえる、語録集」のような存在です。

現代語訳もたくさん出版されているので、手に取りやすい一冊かもしれませんね。

③『和讃(わさん)』

そして、今回じっくりお話ししたいのが、この『和讃』

これは、親鸞聖人が作られた「歌」を集めたものなんです。

「え、お坊さんが歌を作ったの?」と、少し意外に感じるかもしれませんね。

でも、この「歌」という形にこそ、親鸞聖人の深い優しさと願いが込められているんですよ。

もう少し掘り下げて解説していきますね。

なぜ親鸞聖人は「歌」で教えを伝えたの?

「そもそも、どうして親鸞聖人は、わざわざ歌で教えを伝えようとしたんだろう?」

きっと、そんなふうに思いますよね。

その背景には、親鸞聖人が生きておられた鎌倉時代の、当時の人々の暮らしがありました。

平安時代から鎌倉時代にかけては、まだ文字の読み書きができる人は、ほんの一握りでした。

多くの方々は、文字を読むことができなかったんですね。

親鸞聖人は、ご自身が仏教を深く学ばれて、お念仏の教えに出会えた喜びを、一人でも多くの人に伝えたいと願っておられました。

でも、難しい言葉で書かれた書物では、その想いは届きません。

そこで考えられたのが、「歌」という方法だったんです。

歌であれば、

  • 口ずさみやすい
  • 耳で聞いて覚えられる
  • リズムに乗せて、楽しく学べる

というメリットがありますよね。

難しい教えを分かりやすくメロディーに乗せる。

「これなら、文字が読めなくても、みんなで一緒に歌いながら、仏さまの心を味わうことができるんじゃないか」

そんな、どこまでも人々に寄り添う親鸞聖人の温かい心が、この『和讃』を生み出したんですね。

親鸞聖人が遺された『三帖和讃』

親鸞聖人は、生涯で約500首もの和讃を残されたといわれています。

その中でも、特に大切にされ、今もなおお寺の法要などでよく読まれているのが『三帖和讃(さんじょうわさん)』と呼ばれる3つの和讃集です。

なんだか、「3つのテーマ別アルバム」みたいで、ワクワクしませんか?

それぞれ、どんな内容なのか、少しだけ覗いてみましょう。

✅ 1.浄土和讃(じょうどわさん):118首

阿弥陀さまという仏さまや、その仏さまがおられる「お浄土」という世界の素晴らしさを歌った歌集です。

美しい世界観に、心が洗われるような歌がたくさん詰まっています。

✅ 2.高僧和讃(こうそうわさん):119首

親鸞聖人が深く尊敬されていた、インド、中国、日本の七人のお坊さん(七高僧)の功績をたたえた歌集です。

歴史上の偉大な先輩たちが、どのようにお念仏の教えを伝えてきてくださったのか、そのリレーの物語を感じることができます。

✅ 3.正像末和讃(しょうぞうまつわさん):116首

仏教の教えが正しく伝わる時代から、だんだんと形骸化してしまう時代(末法)に移り変わっても、「阿弥陀さまの救いは、決して変わることなく、いつでもどこでも、わたしたちに届いているんですよ」という、希望のメッセージが込められた歌集。

どんな時代に生きるわたしたちにも、等しく光が当たっていることを教えてくれます。

この3つを合わせて、全部で353首。

この『三帖和讃』は、歌いながらお念仏の教えを学ぶことができる、素晴らしい教科書のような役割を果たしてきたんですね。

「和讃」ってどんな歌?3つの魅力と、ちょっぴり高いハードル

では、この和讃には、具体的にどんな魅力があるのでしょうか。

3つの特徴をあげてみたいと思います。

1.心地よい「七五調」のリズム 🎵

和讃は、基本的に「七(しち)・五(ご)」の音の数で構成されています。

「たたたたたたん、たたたたん」という、日本人にとって馴染み深いリズムなので、とても口ずさみやすいんですね。

2.難しい教えの「翻訳」 📚

お経などは漢文で書かれていて、そのままでは意味を理解するのがとても難しいです。

和讃は、そうした難しい教えの内容を、当時の人々が使っていた言葉に「翻訳」してくれるような役割も持っていました。

3.親鸞聖人の「喜び」が凝縮 🙏

これが一番の魅力かもしれません。

和讃は、単なる知識の解説ではなく、親鸞聖人ご自身が「この教えに出会えて、本当によかった!」と感じられた、心の底からの喜びが歌になっているんです。

だから、和讃をじっくりと味わっていくと、親鸞聖人の温かい心に直接触れることができるような、そんな気持ちになってくるんですよ。

「なるほど、なんだか素敵な歌のような気がしてきたな…」

そう感じていただけたかもしれませんね。

では、ここで一つ、浄土真宗の和讃の中でも、おそらく最も有名な和讃をご紹介してみたいと思います。

『恩徳讃(おんどくさん)』という歌です。

如来大悲(にょらいだいひ)の恩徳(おんどく)は
身(み)を粉(こ)にしても報(ほう)ずべし
師主知識(ししゅちしき)の恩徳(おんどく)も
骨(ほね)を砕(くだ)きても謝(しゃ)すべし

(現代語訳)

阿弥陀さまの広大な慈悲のご恩は、この身が粉々になるまで尽くしても、報いきれるものではありません。
そして、その仏法を伝えてくださった師や先輩がたのご恩も、骨が砕けるまで感謝しても、し尽くせるものではありません。
なんと、ありがたいことでしょうか。

…さて、今この歌を聴いて、あなたはどう感じられたでしょうか。

「すんなりと、意味が理解できましたか?」と聞かれると…。

「うーん、如来大悲って言われても、なんだかピンとこないな…」

「『~すべし』っていう言い方も、ちょっと古くて難しいかも…」

正直に言うと、そう感じたかたがほとんどではないでしょうか。

そうなんです。

それこそが、現代における和讃の、ちょっぴり高いハードルなんですね。

親鸞聖人が作られた当時は、画期的に「わかりやすい」ものだったはずの和讃も、800年という長い年月が経った今、わたしたち現代人にとっては、使われている言葉や言い回しが古く、少し専門的に感じられてしまうんです。

当時の人々にとっては、親しみやすい「J-POP」のような存在だったかもしれません。

でも、今のわたしたちにとっては、意味のわからない「クラシック」のように聴こえてしまう…。

それが、和讃の現状なのかもしれませんね。

これから、ご一緒に和讃を味わってみませんか?

「せっかく親鸞聖人が遺してくれた素敵な歌なのに、意味がわからないままなんて、もったいないな…」

ぼくは、ずっとそんなふうに感じていました。

そして、この素晴らしい和讃の世界を、一人でも多くの方と一緒に、ゆっくりと、じっくりと味わっていきたいなと思うんですよ。

そこで、、、

このブログとポッドキャストで、先ほどご紹介した『三帖和讃』353首を、1首ずつ、丁寧に解説していくというチャレンジを始めてみようと考えています。

おそらく、全部を紹介し終えるには、2年くらいかかるかな、、、w

2日に1回くらいのペースを目指して、ゆっくりゆっくり進んでいけたらな、と。

もちろん、これまでお話ししてきたような、身近な仏教のお話も続けていきます。

でも、この「和讃の解説」という柱を立てて、みなさんと一緒に、親鸞聖人の心の温かさに触れていく時間を、大切に育んでいきたいんです。

これは、ぼく自身にとっても挑戦です。

もしよかったら、あなたもこの長い旅に、少しだけお付き合いいただけないでしょうか。

一緒に和讃の味わいを感じていただけたら、こんなに嬉しいことはありません。

まとめ

さいごに、この記事のポイントをまとめておきましょう。

✅ 浄土真宗には『教行信証』『歎異抄』など大切な書物があるが、その中でも**『和讃』は親鸞聖人が作った「歌」である。

✅ 当時、文字が読めない人々のために、「歌」という形で分かりやすく教えを伝えよう**とされた、親鸞聖人の優しさが詰まっている。

✅ 特に『三帖和讃』(浄土和讃・高僧和讃・正像末和讃)は、今も大切に歌い継がれている。

✅ 和讃は、リズムが良く、難しい教えを翻訳し、親鸞聖人の喜びが凝縮されている魅力的な歌だが、現代人には少し言葉が難しく感じられるのが現状。

大切なのは、昔の人が残してくれた温かい言葉に、少しだけ耳を傾けてみることなのかもしれませんね。

ぜひ、あなたの生活の一部に、この「和讃」という優しいメロディーを、少しだけ取り入れてみてくださいね。

これから始まる和讃の解説、もしご興味があれば、またぜひ聴きに、そして読みにいらしてください。

第1回目は「浄土和讃」の1首目からスタートする予定です。

さいごまでお読みいただき、本当にありがとうございました。